先日、知的財産のライセンスに関する調査報告が公表されました。
前回のライセンス料率調査報告書は、平成21年に出されたものが最新だったので、実に15年ぶりとなるようです。
H21と比較してみる
今回の調査結果をざっと見ると、ライセンス料率(正味販売高※1に対するライセンス料率)は、平成21年の調査結果と比べてドラスティックには変わってないようですが、若干の変化が見られます。母集団の違いやら色々あって単純比較はできないと思いますが、平均値については、特許は低め傾向、商標は高め傾向、プログラム著作権は横ばい、技術ノウハウは若干高め傾向、といったところでしょうか。
※1:「正味販売高」:総販売額から、返品額、割引額、運搬・配送・輸送費、保険料、梱包費などの必要経費を差し引いた額。これを基にライセンス料率を計算することが一般的。ライセンサー側とライセンシー側で「正味販売高」の認識合わせをして、しっかり定義することが大切です。

以下、H21とR6のそれぞれの調査報告書でのグラフを引用しますので、対比をお楽しみください(グラフの出典:H21「平成 21 年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書」、R6「ロイヤルティ料率に係るアンケート調査結果」)。
■特許権のライセンス料率
○H21

○R6

■商標権のライセンス料率
○H21

○R6

■プログラム著作権のライセンス料率
○H21

○R6

■技術ノウハウ
○H21

○R6

営業利益率と比較してみる
ところで。
製品の企画開発において、他社の知的財産権の侵害とならないように、権利を回避しならがら設計する… って、なかなか面倒ですね。
自社開発してる企業さんなら、当然ながら企画開発段階で調査はすると思うのですが(まさか調査しないということはないですよね?)、特許や意匠の出願はすぐ公開されるわけではなくタイムラグがあるので、時間が経過した後の段階で、他社の出願(権利)の存在が発覚することもあります。だいぶ設計が進んでると、変更も大変だなー。
特許や意匠よりも公開が商標でも、パッケージや販促品等を作っちゃった後に他社の出願が発覚すると、同じように大変です。
なので
「権利侵害になるなら、ライセンスをもらえばいいじゃない」
なんて、マリー・アントワネット的な悪魔の声が聞こえるわけです。

しかし?
ちょっと待ったー
上で示したライセンス料率を、もいっかい見てください。
例えば、特許権のライセンス料の平均値は「正味販売高の3.7%」です。
これって「払っちゃえばいいじゃん」って気軽に言える額ですかね…?
ここで、売上高営業利益率(本業の稼ぎによる利益率)の平均を、業種別に見てみましょう。

2022年は、全体(合計)では4.0%、製造業では4.9%、卸売業では2.9%、小売業では2.8%となっています(いまでは原材料費の高騰等でもっと低くなってるかもしれませんね…)。
単純比較はできないですが、ざっくり見ると、「正味販売高」が基礎の特許権のライセンス料率って、売上高営業利益率と比較して、なかなかの数字じゃないですか?
まともに払ってたら利益が吹っ飛ぶんじゃ…。ライセンス料は、損害賠償金の代替の意味合いがあるので、そういうもんだと言われればそうなんですが。
これを何年も払い続けるのは、かなりの辛みかもしれません。
では、どうしましょう?
身も蓋もないですが、方策は個々のケースによって変わります。
貴社の利益率とか、その製品に予測される利益率とか、開発設計の段階とか、そこまで投入した費用額とか、取引先との調整の可否とか…個々のケースで色んな条件が異なるからです。
条件によって、ライセンス料を払った方がお得なのか、設計変更した方がお得なのか、設計変更するなら今すぐした方がいいのか、それとも1年はライセンス料払うけど次の年までに設計変更完了を目指すか…等、取り得る方策が変わってきます。
色々なことを考えて検討する必要がありますね…。
社内では検討が難しいようでしたら、我々弁理士にご相談ください!
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