前回のエントリでは、”中小企業診断士さんが欲しい知財情報”のアンケート結果についてご紹介しました。繰り返しになりますが、とても興味深い結果となりました。
今回は、アンケート結果で多かった回答に対して、自分が考えているところについて、少し触れてみたいと思います。
「どのような情報等が知財として価値があるか」「事業計画への知財情報の活かし方」
”中小企業診断士さんが欲しい知財情報”に対する回答として多く挙げられていたのは、
「どのような情報等が知財として価値があるか」「事業計画への知財情報の活かし方」
でした。
少し具体的な例で考えたいと思います。
◆内部環境の情報
例えば、事業計画書を作成する際は、SWOT分析を行うと思いますが、特に内部環境のSW(強み・弱み)の情報については、企業様にヒアリングして探ることが多いと思います。
今回は、この内部環境の情報に着目したいと思います。
ここで、企業様が製造業だとして、S(強み)を探るために、社長さんに「なぜ顧客に選ばれているのか?」という問いかけをしたとき、こんな答えが返ってきたとします。
社長さんの仰る「高い技術力」とは、なんでしょう。
深堀り、つまり『発掘』すると、個々の技術者さんの技能力であったり、新しいものを生み出す開発力であったり、企業してそれらを活かせる環境が整っていたり… と、様々な「技術力」を『抽出』できると思います。
例えば、技術者が日常的に器具の改良を行っているため生産性が高い、ということであれば、技術者の「工夫力」という「技術力」を『抽出』できます。また、日常的に改良ができる環境があることも「技術力」として『抽出』できます。これら「技術力」が企業の利益を生み出す源泉である無形の「知的資産」であり、この企業のS(強み)の1つです。
どんどん深堀して『発掘・抽出』を行うと、ぼんやりと認識していた「知的資産」を、明示的に言語化・図式化して『見える化』することができます。
「知的資産」を『見える化』すると、それぞれの「技術力」が業務上実現化されたもの(実装されたもの)を、該当する「知的財産(特許、意匠、商標、ノウハウ等)」に振り分けることができます。
上の例で実現化された ”改良された器具”に関するアイデア/外観等は、特許/意匠/ノウハウ等に振り分けられる可能性があります(なお、1つのものに実現化されたもの(実装されたもの)が複数の「知的財産」に該当することもあります)。このとき弁理士の力を借りれば、事案に応じて適切な振り分けを行うことができます。
このようにして、中小企業診断士さんが知りたい「知財として価値がある情報等」が、明らかになります。
さて、振り分けた「知的財産」をどのように『活かす』か。
「知的財産」は、やりたいことを効果的・スムーズに実現させるためのツールです。「知的財産」を『活かす』とは、ツールとして上手く機能させることです。
そのために、事業でやりたいことの目的と個々のツールの効果を考慮して、他社けん制や宣伝広告として使うため特許等として権利化するのか、それともノウハウとして秘匿化した方がいいのか、はたまたブランディングを上手くいかせるために商標権を取得するのか…等を検討します。
ツールが上手く機能すれば、事業がドライブする可能性が高まります。その分、S(強み)がより一層強化されるでしょうし、場合によってはW(弱み)が克服されるかもしれません。
また、ツール化した「知的財産」は、パワーアップした「知的資産」となり、資産価値が向上します。
こういった内部環境の変化の情報を事業計画に盛り込めば「事業計画に知財情報を活かす」ことができます。
ちなみに、「知的財産」をツールとして上手く機能させるためテクニックを駆使することは弁理士の仕事ですが、製品の企画・設計・開発・上市のどの段階でツールとして吐き出すかという時系列的なプロセスについては、企業様側でもコントロールが必要です。このことについては、別の機会に改めて触れたいと思います。
以上、企業の内部環境の情報に着目して
「どのような情報等が知財として価値があるか」「事業計画への知財情報の活かし方」
について触れてみました。
いかがでしたでしょうか!
次回は、外部環境の情報について触れたいと思います。
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